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資料

医学教育改革関連資料

診療参加型臨床実習に参加する学生に必要とされる技能と態度に関する学習・評価項目(修正案)

共用試験実施機構運営委員会・OSCE委員会
医科OSCE分科会
(平成14年11月25日)

はじめに

全国80医学部・医科大学が平成17年度からの本格導入を目指している臨床実習開始前の共用試験は知識を評価するCBTと技能・態度を評価するOSCEとからなっている.OSCEの課題は患者さんと接して行う参加型臨床実習を開始するのに最低限必要な技能・態度が身についているか否かを評価するものである.またすでに公表されている「医学教育モデル・コア・カリキュラム」に準拠したものである必要があろう.
そこで本委員会では「医学教育モデル・コア・カリキュラム」に対応したOSCE課題として、適当と思われる9課題(1医療面接、2頭頸部診察、3胸部診察、4腹部診察、5神経診察、6脈拍・血圧の測定、7救命処置、8手洗い・ガウンテクニック、9外科基本手技)を設定した.言い換えれば共用試験におけるOSCEコア・ステーションを試作した.試作コア・ステーションの妥当性ならびにコア・ステーションにおける評価項目の適否を全国80医学部・医科大学に問うことをお願いする次第である.
平成13年度版医師国家試験出題基準には参考資料として、「OSCE評価表」が収載されているが、本委員会ではあえて点数として評価できるような評価表は現時点では提示しないこととした.なぜなら共用試験OSCEとしての評価項目や評価表を示すことによって、学生が点数をつけられる評価項目だけを、ピンポイント的に学習する幣を恐れたからである.したがってここでは、「参加型臨床実習に参加する学生に必要とされる技能・態度に関する学習項目・評価項目」として示してある.またこの学習・評価項目は脱落を避けるためにあえて網羅的に策定したため、臨床実習開始前学生には困難で臨床実習修了後に備わっていればよい項目も入っていると考える.この点もご吟味いただければ幸いである.
さらに付け加えると、実際のOSCEは1ステーション5-10分で実施されることが多いと思われるが、学習・評価項目の全体像が把握できるように、時間配分を考慮せずに記載してある.例えばここで示した神経診察を1課題、1ステーションとして実施することとは不可能で、一部を抽出するか分割して行う必要がある.
ぜひ忌憚のないご意見をいただきたい.そしてご意見を反映させた改正案を今秋にはお示しするつもりである.

平成14年6月22日

医科OSCE分科会会長
山崎洋次

修正案によせて

平成14年6月22日、全国80医学部・医科大学の担当者の方々にお集まりいただき、「診療参加型臨床実習に参加する学生に必要とされる技能・態度に関する学習項目・評価項目(案)」を提案申し上げた.同時にこの案に関する御意見を各大学あてに伺った.約800にわたる学習・評価項目について、○:臨床実習開始前に学生が身につけておく項目、△:学生が臨床実習中に身につけるべき項目、×:卒後臨床研修以降に身につけるべき項目に分類していただくとともに、自由なご意見の付記もお願いした.極めて短期間のうちにご回答をお願いしたにもかかわらず、73校から貴重なご意見を頂戴した.ご繁忙の中、ご回答を賜った担当者各位に改めて感謝申し上げる.
×:卒後臨床研修以降に身につけるべき項目であるというご意見が半数を占めたものについては個別に検討の上、割愛または臨床実習開始前には不要として注釈(*)を加えることとした.しかしわが国の臨床実習教育では欠けているが、今後ぜひ必要となると判断した項目については、あえてそのまま残し教育改善の便(よすが)とした.また一部字句の訂正等も行った.
多くの関係者から、共用試験OSCEとして実施する場合、学生評価はどのように、どのような様式に基づいて行うのかとお尋ねいただいた.本編はあくまでも「学習」と「評価」のための項目を網羅的に提示したものであって、実際の形成的評価や総括的評価に供するものではない.なるべく早い時期に本委員会内にプロジェクトチームを設置して共用試験として使用可能な評価表と評価者のためのマニュアルを策定し、各校においてご検討いただくつもりである.
よりよい臨床実習が各大学で円滑に開始できるためには、臨床実習開始前OSCEは不可欠なものであるという共通認識に依拠して本編は改良されていくべきであると考えている.今後ともぜひご叱正とご協力をお願いする次第である.

平成14年11月25日

医科OSCE分科会会長
山崎洋次

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目次

I.診察に関する共通評価項目
II.医療面接
III.頭頸部診察
IV.胸部診察
V.腹部診察
VI.神経診察
VII.脈拍・血圧の測定
VIII.救命処置
IX.手洗い・ガウンテクニック
X.外科基本手技

学生が臨床実習中に学習し卒業修了時には身につけておくべき項目であるが、臨床実習開始前には備わっていなくてもよいと判断したものについては*を付記した.ただしここで*として示した技能・態度が卒業修了時に身につけておくものすべてを網羅してはいない.

I.診察に関する共通評価項目

プライバシーへの配慮
■ 患者さんのプライバシーおよび羞恥心に配慮する

身だしなみ
■ ユニフォーム(白衣)は洗濯済みで、清潔である
■ ユニフォーム(白衣)のボタンをきちんととめ、名札をつけて着用している
■ ユニフォーム(白衣)のポケットの中のものに配慮する(診察中に落ちたり、飛び出したりしないように注意する)
■ 聴診器の扱いに配慮できる(患者さんに不快感を与えない、だらしなくしない)
■ 華美な服装(化粧・アクセサリーなど)でない
■ 全体の印象で不快感がない
■ 全体の印象で清潔感がある
■ 髪型頭髪が多くの患者さんにとって抵抗感がない
■ ヒゲは手入れされている
■ 不快な口臭・体臭がない
■ 爪はきちんと切ってある
■ マニキュアはしていないか、あるいは派手でない(淡色で目立たない)
■ 履物は動きやすく清潔感があり、足にフィットしている
■ 履物の音が大き過ぎない
■ 診察前に手を清潔にする

言葉遣い
■ 患者さんに適した声の大きさである(高齢者にも聞こえる/小児が驚くことがない)
■ 患者さんがわかり易いはやさで話す
■ 患者さんへの敬意が感じられる言葉遣い(適切な敬語)である
■ 患者さんを気遣う言葉を使う

診察の開始と終了
■ 挨拶、自己紹介、患者確認をする
■ 診察をする旨を告げ、了承を得る
■ 診察の種類に合わせて適切に声をかける
■ 診察終了後に挨拶をする
■ 診察終了後、次のステップ(どこで待っていただくなど)の説明をする

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II.医療面接

導入部分:オープニング
■ 適切な呼びいれをする(失礼でない声かけ、明確な発音)
■ 患者さんが入室し易いように配慮する(ドアをあける、導く、荷物置き場を示すなど)
■ 患者さんに椅子をすすめる(必要があれば介助する)
■ 同じ目の高さで患者さんに対して挨拶をする
■ 患者さんに対して自己紹介をする(フルネーム、明確な発音、難しい漢字は名札を示す)
■ 患者さんの名前をフルネームで確認する.患者さんに名乗ってもらう場合は、確認のためにという目的を告げる
■ 面接を行うことの了承を患者さんから得る
■ *(症状の強い場合)面接を行うことが可能かどうかを患者さんに確認する
■ *(症状の強い場合)患者さんが楽な姿勢で面接を行えるように配慮する
■ 適切な座り方をする(患者さんとの距離、体の向き、姿勢、メモの位置)
■ 面接の冒頭で患者さんの訴えを十分に聴く

患者さんとの良好な(共感的)コミュニケーション
■ 患者さんにわかり易い言葉で会話する
■ 患者さんと適切なアイコンタクトを保つ
■ 患者さんに対して適切な姿勢・態度で接する
■ 聴いている時に、相手にとって気になる動作をしない(時計を見る、ペンを回す、頬杖をつく、など)
■ 患者さんの状態にあった適切な声の大きさ、話のスピード、声の音調を保つ
■ 積極的な傾聴を心がける(できるだけ開放型質問を用いて患者さんが言いたいことを自由に話せるように配慮する)
■ コミュニュケーションを促進させるような言葉がけ・うなずき・あいづちを適切に使う
■ 相手が話しをし易い聴き方をする(さえぎらない、過剰なあいづちをしないなど)
■ 患者さんの言葉を適切にパラフレーズ(繰り返し)する
■ 聴きながら、必要があれば適宜メモをとる
■ 患者さんの気持ちや患者さんのおかれた状況に共感していることを、言葉ないし態度で患者さんに伝える
■ 患者さんの訴えやこの間の経過について適切に要約する
■ 患者さんの訴えやこの間の経過についての要約に間違いがないかどうかを確認する

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患者さんに聞く(話を聴く):医学的情報
■ 症状のある部位を聞くLocation
■ 症状の性状を聞くQuality
■ 症状の程度を聞くQuantity or severity
■ 症状の経過を聞くTiming
■ 症状の起きる状況を聞くSetting
■ 症状を増悪、寛解させる因子を聞くFactors
■ 症状に随伴する他の症状を聞くAssociated manifestations
■ 症状に対する患者さんの対応を聞く
■ 睡眠の状況を聞く
■ 排便の状況を聞く
■ 食欲(食思)の状況を聞く
■ 体重変化を聞く
■ (女性の場合)月経歴を聞く
■ 症状が患者さんの日常生活に及ぼす程度を聞く
■ 既往歴を聞く
■ 常用薬を聞く
■ 家族歴を聞く
■ アレルギー歴を聞く
■ 嗜好(飲酒、喫煙など)を聞く
■ 生活習慣(一日の過ごし方)を聞く
■ 社会歴(職歴、職場環境など)を聞く
■ 生活環境(衛生環境、人間関係など)・家庭環境(ペット、家族構成など)を聞く
■ 海外渡航歴を聞く
■ System reviewを行う

患者さんに聞く(話を聴く):心理・社会的情報
■ 患者さんの生活や仕事などの社会的状況を聞く
■ 患者さんの思いや不安などの心理的状況を聞く
■ 患者さんの病気や医療に関する考えや理解(「解釈モデル」)を聞く
■ 患者さんの過去の「受療行動」を聞く
■ 患者さんの過去の「対処行動」を聞く
■ 患者さんの特に気になっていること心配していることを、詳しく聞く
■ 他医受診(代替医療も含む)の有無と処方内容を聞く

患者さんに話を伝える
■ 患者さんにわかり易い言葉で話をする
■ 患者さんが話を理解できているかどうか確認する
■ 話の途中でも患者さんにここまでで質問がないかどうかを確認する
■ 患者さんが質問や意見を話せるように配慮する(雰囲気、会話の間など)

(患者さんとの診療計画の相談のプロセスは省略)

締めくくり部分:診察への移行/クロージング
■ 聞き漏らしや質問がないか尋ねる(まだお聞きしていないことや、ご質問はございますか?)
■ 面接終了後、患者さんが次にどうしたら良いかを適切に伝える
  □ (身体診察への移行する場合)
    ・ 身体診察を始めることの同意を得る
  □ (クロージングする場合)
    ・ *何かあればいつでもコンタクトできることを患者さんに伝える
    ・ 患者さんが退室する際に配慮する(必要があれば介助する)
    ・ 挨拶をする(おだいじに、お気をつけて、など)

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III.頭頸部診察

診察時の配慮
■ 頭頸部の診察をする旨を告げ、了承を得る
■ 診察の種類に合わせて適切に声をかける
■ 手および聴診器を清潔にし,必要に応じて温める
■ 必要があれば眼鏡・アクセサリーなどをはずしてもらう

頭部の診察
■ 頭
  □ 頭髪・顔貌・皮膚の異常の有無を視診で判断する
  □ 頭皮・頭蓋の異常の有無を触診で判断する
■ 眼
  □ 眼球の突出・眼瞼の浮腫の有無などを確認する
  □ 瞳孔、虹彩、角膜:左右差や異常(色・形など)の有無を判断する
  □ 瞳孔:視野の外から光を入れて直接対光反射を実施する
  □ 結膜で黄疸・貧血を観察する(眼球結膜:黄疸、眼瞼結膜:貧血)
■ 耳
  □ 耳介の形態を観察する
  □ 携帯用耳鏡を適切に扱う
  □ 携帯用耳鏡で外耳道所見を観察する
  □ 携帯用耳鏡で鼓膜所見を観察する
■ 鼻
  □ 全体の形状・皮膚の所見を観察する
  □ 鼻閉塞の有無を確認する
  □ *副鼻腔(上顎洞・前頭洞)の圧痛、叩打痛を確認する
■ 口唇・口腔
  □ ペンライトが口唇に触れたり、口腔内に入らぬように使う
  □ 口唇所見を観察する
  □ 舌圧子を清潔に用いて観察範囲を広げる
  □ 頬粘膜所見を観察する
  □ 歯の所見を観察する
  □ 歯肉の所見を観察する
  □ 口蓋(軟口蓋・硬口蓋)・口腔底所見を観察する
  □ 舌所見を観察する
  □ 口蓋扁桃所見を観察する
  □ 咽頭後壁所見を観察する
  □ 使用後の舌圧子を適切に処理する
■ 唾液腺
  □ 耳下腺、顎下腺を第2‐4指の指腹を使って触診する
■ 頭頸部リンパ節
  □ 後頭部のリンパ節を第2‐4指の指腹を使って円を描くように触診する
  □ 耳介後部のリンパ節を第2‐4指の指腹を使って円を描くように触診する
  □ 耳介前部のリンパ節を第2の指腹を使って指を回すように触診する
  □ 下顎角直下のリンパ節(扁桃部リンパ節)を第2‐4指の指腹を使って円を描くように触診する
  □ 顎下部のリンパ節を第2‐4指の指腹を下顎骨にむかって掘るように触診する
  □ オトガイ下部のリンパ節を第2指の指腹をオトガイ部にむかって掘るように触診する
  □ 後頸部のリンパ節を第2‐4指の指腹を使って円を描くように触診する
  □ 内頸静脈(胸鎖乳突筋)に沿ってリンパ節を触診する
  □ 胸鎖乳突筋を掴むように筋下のリンパ節を触診する
  □ 鎖骨上窩のリンパ節を掘るように触診する
■ 頭部の所見を患者さんに説明する(臨床実習では指導医の指導のもとで行う)

頸部の診察
■ 甲状腺
  □ 嚥下してもらいながら甲状腺を視診する
  □ 輪状軟骨の位置を確認し、利き手の第2指・指腹で甲状腺峡部をそっと触診する
  □ 両第1指・指腹で甲状腺側葉を触診する
  □ 背部からも両第2‐4指の指腹を使って触診する
  □ 嚥下してもらいながら甲状腺を触診する
■ 気管
  □ *気管短縮(輪状軟骨から胸骨上縁までおよそ3横指未満)の有無を視触診で判断する
  □ *気管の偏位の有無を視診で判断する
■ 頸動脈
  □ 下顎角直下約2cmのところの頸動脈の聴診をする(両側)
  □ 一側ずつ頸動脈を輪状軟骨の高さで指腹を使ってそっと触診をする
■ 頸静脈
  □ 外頸静脈を観察する(仰臥位では輪郭を認めるが座位では見えない)
  □ *上半身を45°に保ち、接線方向にペンライトの光をあて内頸静脈の拍動を観察する
  □ *右鎖骨上部で血管音(静脈コマ音)を聴診する
■ 頸部の所見を患者さんに説明する(臨床実習では指導医の指導のもとで行う)

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IV.胸部診察

診察時の配慮
■ 胸部の診察をする旨を告げ、了承を得る
■ 診察の種類に合わせて適切に声をかける
■ 手および聴診器を清潔にし,必要に応じて温める
■ 非診察部位を覆うように配慮する

視診
■ 胸部全体を露出して診察をする
■ 解剖学的部位(胸骨角・剣状突起)を特定する
■ 皮疹の有無を確認する
■ 着色斑の有無を確認する
■ 手術痕の有無を確認する
■ 呼吸数を測定する
■ 呼吸の異常(型・数・リズム・深さ)の有無を確認する
■ 形状・運動の左右差の有無を確認する
■ 鎖骨上窩・肋間の吸気時の陥凹の有無を確認する
■ 視診所見を患者さんに説明する(臨床実習では指導医の指導のもとで行う)

打診
■ 左手を広げ、中指の中節骨部またはDIP関節部を、曲げた右中指で弾むように2回ずつ叩き打診する
■ 肺尖・側胸部を含めた胸部全体を打診する(清音)
■ 左右交互に上から下へ打診して、左右差を確認する
■ 鎖骨中線上で頭側から打診し肺肝境界を確認する
■ 打診所見を患者さんに説明する(臨床実習では指導医の指導のもとで行う)

聴診
■ 深呼吸をしてもらう
■ 呼気と吸気の両方を聴診する
■ 肺尖・側胸部を含めた胸部全体を聴診する(肺胞呼吸音、気管支呼吸音、気管呼吸音)
■ 左右を交互に比較して聴く
■ 聴診所見を患者さんに説明する(臨床実習では指導医の指導のもとで行う)

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背面の診察
視診

■ 患者さんの背面に移動する(または患者さんに背中を向けてもらう)
■ 解剖学的部位(隆椎、肩甲骨下角)を特定する
■ 皮膚所見(皮疹・着色斑・手術痕など)の有無を判断する
■ 胸郭の形状、輪郭(変形・左右差など)を判断する
■ 視診所見を患者さんに説明する(臨床実習では指導医の指導のもとで行う)

打診
■ 背面全体を打診する
■ 左右交互に打診して、左右差を確認する
■ *横隔膜の呼吸性移動を確認する
■ 打診所見を患者さんに説明する(臨床実習では指導医の指導のもとで行う)

触診
■ *声音振盪を確認する
■ 触診所見を患者さんに説明する(臨床実習では指導医の指導のもとで行う)

聴診
■ 深呼吸をしてもらう
■ 聴診器を密着させる
■ 左右を比較して聴く
■ 背部全体を聴診する(肺胞呼吸音、気管支呼吸音、気管呼吸音)
■ 呼気吸気を聴診する
■ *声音聴診を確認する
■ 聴診所見を患者さんに説明する(臨床実習では指導医の指導のもとで行う)

叩打痛
■ 背面の叩打痛の有無を確認する
■ 脊椎の叩打痛の有無を確認する
■ 肋骨脊柱角(CVA)の叩打痛の有無を確認する

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心臓の診察
視診

■ 心尖拍動を確認する(座位・臥位)
■ 胸壁拍動を確認する(座位・臥位)
■ 視診所見を患者さんに説明する(臨床実習では指導医の指導のもとで行う)

触診
■ 心尖拍動の位置と広がりを手掌と指先で確認する
■ 前胸部の胸壁拍動を手掌で確認する
■ *振戦の有無を確認する
■ 触診所見を患者さんに説明する(臨床実習では指導医の指導のもとで行う)

聴診
■ 4領域(心尖部・三尖弁領域・肺動脈弁領域・大動脈弁領域)を膜型で聴診する
■ I音とII音を同定する
■ II音の分裂を確認する
■ ベル型でIII音、IV音を確認する
■ 左側臥位で心尖部をベル型と膜型で聴診する
■ 聴診所見を患者さんに説明する(臨床実習では指導医の指導のもとで行う)

乳房の診察(臨床実習前にはシミュレーターを用いて学習し,臨床実習では指導医の指導のもとで行う)
視診
■ 座位で肢位を変えながら視診を行う
■ 左右差を確認する
■ 皮膚の所見(発赤・腫脹・陥凹・発疹・手術痕など)を確認する
■ 変形の有無を確認する
■ *乳頭の異常(陥没、異常分泌、びらん、潰瘍など)の有無を確認する
■ 視診所見を患者さんに説明する(臨床実習では指導医の指導のもとで行う)

触診
■ 患者さんに適切な体位(仰臥位)をとってもらう
■ 指先と手掌で乳房全体を丁寧に触診し,異常の有無を確認する
■ *腋窩および鎖骨上窩リンパ節を触診する
■ 触診所見を患者さんに説明する(臨床実習では指導医の指導のもとで行う)

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V.腹部診察

診察時の配慮
■ 腹部の診察をする旨を告げ、了承を得る
■ 診察の種類に合わせて適切に声をかける
■ 手および聴診器を清潔にし,必要に応じて温める
■ 非診察部位を覆うように配慮する

診察の順序
■視診−聴診−打診−触診 の順序で診察を進める

視診
■ 腹部の輪郭・形状(平坦・膨隆・陥凹)を判断する(胸郭レベルまたは剣状突起と恥骨結合とを結ぶ仮想線が基準)
■ 皮疹の有無を判断する
■ 着色斑の有無を判断する
■ 手術瘢痕の有無を判断する
■ 腹部の視診所見(形状・皮疹など)を患者さんに説明する(臨床実習では指導医の指導のもとに行う)

聴診
■ 聴診器でお腹の音を聴くことを説明する
■ 聴診器が冷たくないことを確認する(冷たいときは暖める)
■ 冷たいかもしれないことを話し、もし冷たかったら、そうおっしゃってくださいという
■ 腸蠕動音を聴診する
■ 左右の腎動脈音を聴診する
■ 大動脈音を聴診する
■ 振水音を聴診する
■ 聴診所見(腸蠕動音・血管雑音など)を患者さんに説明する(臨床実習では指導医の指導のもとに行う)

打診
■ お腹をたたいて(打診で)診察することを説明する
■ 手が冷たくないことを確認する
■ もし冷たかったり、痛かったら、その旨を伝えるように話す
■ 左手を広げ、中指の中節骨部またはDIP関節部を、曲げた右中指で弾むように2回ずつ叩き打診する
■ 腹部全体を、左上・中・下、中央下・中・上、右上・中・下の9か所を打診する
■ 打診しながら痛みの有無を確認する
■ 打診音の異常の有無を確認する
■ 肝の上界を、右鎖骨中線で、肺肝境界の打診で判断する
■ 肝の下界を、右鎖骨中線で、尾側からの打診で判断する
■ Traube三角に濁音界がない(鼓音である)ことを判断する
■ Traube三角に左手を開いてあて、右手の拳で軽く叩く(叩打痛の有無)
■ Traube三角の対称部(右肋弓上)で、同様に叩打痛の有無を診察する
■ 腹部の打診所見を患者さんに説明する(臨床実習では指導医の指導のもとに行う)

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触診
■ お腹を触って、診察することを説明する
■ もし冷たかったり、痛かったら、その旨を伝えるように話す
■ お腹の力を抜き、両膝を軽く曲げてもらう
■ 下半身がバスタオルで覆われていることを確認する
■ 面接情報または打診で痛みがある部位は最後に触診する
■ 患者さんの表情を見ながら触診する
■ 手首をしなやかに、手掌と指を使い分けて触診する
■ 浅い触診:腹部全体を浅く、さするように触診する
  □ 深呼吸をしてもらいながら、吸気時に腹壁が上がる分だけ手が沈む程度に触診する
  □ 腹壁を1cm以上圧迫しない程度に行う
■ 深い触診:利き手または左右の手を重ねて(利き手を腹壁におき、反対の手で力を加える)触診する
  □ 利き手を押し下げ、少し手前に引くように触診する

■ 肝の触診
  □ 打診で推定した肝の下縁よりも尾側に右手をおく
  □ 左手を背部におき、肝を持ち上げながら触診を進める
  □ 患者さんに腹式呼吸をしてもらい、呼気時に右手の指を深く入れる
  □ 次の吸気時の腹壁の上がりよりも少し遅れて右手が上がるようにして肝の下縁を触れる
  □ 右第2・3指先(やや第1指側面)または 肋骨弓に平行に置いた第2指の第1指側面で触れる

■ 脾の触診
  □ 患者さんに45°右半側臥位になってもらう(90°でも可)
  □ 胸郭/肋骨籠(rib cage)を後ろから持ち上げる気持ちで左手を背部にあてる
  □ 右手を左肋骨弓の尾側に置く
  □ 患者さんに腹式呼吸をしてもらう
  □ 吸気時に、腹壁の上がりより右手の上がりが遅れるようにして脾を触診する

■ 腎の触診
  □ 左手を背部の第12肋骨の直下に平行に置き、指先が肋骨脊柱角(CVA)に届くようにする
  □ 右腎を前方に持ち上げるようにする
  □ 右手を上腹部、腹直筋の外側に平行になるように静かに置く
  □ 患者さんに深呼吸をしてもらう
  □ 最吸気時にしっかりと右手を深く右上腹部に入れる
  □ 腎を両手で捕獲する気持ちで腎下極を挟み込むように触診する(腎は上方に滑る)
  □ 右腎と同様に左腎を触診する(可能であれば患者さんの左側に移動する)
  □ CVAの部を圧迫して圧痛をみるか、側臥位または座位でCVAに平手をおいて手拳の尺側面で叩く

■ 腹部の触診所見を患者さんに説明する(臨床実習では指導医の指導のもとに行う)

■ 腹水の有無
  □ *ナースまたは患者さん自身の手の側面を腹部正中線に縦に立ててもらい,側腹部を手指で軽く叩いて衝撃を加え、対側の側腹部に置いた別の手に波動を感じとる
  □ *Shifting dullnessによって腹水の有無を判断する
  □ 患者さんに仰臥位または半側臥位になってもらい、打診音が変化する部をマークする
  □ 側臥位に移行してもらいながら、打診音が変化する部(濁音界)をマークし比較する

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■ 圧痛
  □ 痛みのある場所の触診は最後にする
  □ 圧痛の触診に際し、患者さんに配慮して、痛かったら教えてくださいという
  □ 圧痛の触診に際し、患者さんに配慮して静かに、ソフトに触診する
  □ 一本の指の末節掌側を使って、限局した圧痛点を探り、確認する
  □ *虫垂炎が疑われる場合、McBurneyの圧痛点を同定し、痛みの有無を確認する
  □ *急性胆嚢炎が疑われる場合、Murphyの徴候(右肋弓下の圧痛による吸気の途絶)を確認する
  □ *消化性潰瘍が疑われる場合、心窩部〜右季肋部に、限局した圧痛の有無を確認する

■ 腹膜刺激徴候
  □ 利き手で腹壁をそっと押し、腹壁筋の不随意の緊張の有無を確認する(筋性防御)
  □ *筋性防御が不明瞭の場合、左右を比較するなどの工夫をする
  □ 圧痛の有無を確認し、急に圧を抜いて痛みの増強の有無を確認する(rebound tenderness)
  □ 患者さんにつま先立ちしてもらい、急に踵をおろした際に腹部に響くかを確認する
  □ 腹膜刺激徴候の所見を患者さんに説明する(臨床実習では指導医の指導のもとに行う)

■ 腹部腫瘤
  □ *浅い触診と深い触診とにより、腫瘤の有無を判断する
  □ *腫瘤がある場合、L〜Tを観察して表現する
    ・ L:Location             位置
    ・ M:Mobility              可動性
  □ N:Nodularity             表面の性状
  □ O:relationship to Other organs  他臓器との関係
    ・ P:Pulsatility             拍動の有無
    ・ Q:Quality               硬さ
    ・ R:Respiratory mobility      呼吸性移動の有無
  □ S:Size & Shape            大きさと形
    ・ T:Tenderness            圧痛の有無

■ 直腸診(臨床実習前にはシミュレーターを用いて学習し,臨床実習では指導医の指導のもとで行う)
  □ 直腸診の目的を患者さんに説明する
  □ 直腸診の方法の概略を患者さんに説明する
  □ 直腸診をすることについて、患者さんの承諾を得る
  □ ナース(または他の医療職)が陪席していることを確認する
  □ 患者さんに適切な診察体位(左側臥位または切石位)になってもらう
  □ タオルで直腸診に必要な部位以外は覆う
  □ 直腸診の途中で患者さんに適切に声をかける
  □ 笠つき指サックまたは処置用手袋を着用する
  □ 笠つき指サック または 手袋の示指に潤滑剤をつける
  □ 潤滑剤をつける際に、チューブの口または容器内に触れない
  □ 肛門周囲を視診する
  □ 肛門周囲を触診することを患者さんに説明する
  □ 肛門周囲を触診する
  □ 肛門内指診を行うことを患者さんに説明する
  □ 肛門内指診を適切に行う
  □ 直腸内指診を適切に行う
  □ 指先に付着した便の性状を観察する
  □ 使用後の用具を適切に処理する

■ 直腸診が終わったあと、患者さんに所見を適切に説明する(臨床実習では指導医の指導のもとに行う

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VI.神経診察

診察時の配慮
■ 神経系の診察をする旨を告げ、了承を得る
■ 診察の種類に合わせて適切に声をかける
■ 手を清潔にし,必要に応じて温める
■ 必要があれば眼鏡・アクセサリーなどをはずしてもらう

診察の順序
■ 脳神経系(座位)-上肢の運動系(座位)-起立・歩行(立位)-下肢の運動系(腹臥位→臥位)-感覚系(臥位)-反射(臥位)の順序で診察を進める
  □ 認知機能や言語については、医療面接の段階で大まかに判定しておく
  □ 同様に、視力や聴力についても、医療面接の段階で詳細な検査が必要かどうかを判断しておく
  □ 病歴から筋力低下が疑われる場合には、四肢の徒手筋力検査を追加する
  □ 髄膜刺激徴候の有無が問題になる場合には、必要な検査を追加する

脳神経系の診察(座位)
■ 眼裂・瞳孔/対光反射
  □ 患者さんの前方を手で示しながら、遠くを見ているよう指示する
  □ 眼裂(眼瞼下垂や左右差の有無など)を視診する
  □ 瞳孔の形・大きさ(正円かどうか、縮瞳・散瞳・瞳孔不同の有無)を視診する
  □ ペンライトを見せながら、光で眼を照らすことを患者さんに告げる
  □ 患者さんの視線の外側から光をあてる
  □ 光をあてた側の瞳孔(直接対光反射)と反対側の眼の瞳孔(間接対光反射)の収縮を観察する
  □ 必ず両側を検査する
■ 調節・輻輳反射
  □ 患者さんの眼のやや上方50-60cmのあたりに第2指をかざし、指先を見ているよう指示する
  □ 患者さんの眼前15-20cm位まで指先をゆっくり近づけて、両側眼球の内転、瞳孔の収縮を観察する      
視野 
  □ 自分で見本をみせながら、片側の眼を手で覆ってもらう
  □ 視線を動かさず、検者の眼を見ているように指示する
  □ 見本をみせながら、検者の指が動くのが見えたら教えてくれるよう伝える
  □ 検者は上腕を伸ばした位置で検査する
  □ 検者の指は患者さんとのほぼ中間地点にあるようにする
  □ 検者も患者さんに合わせて片目を閉じる
  □ 視野の右上、右下、左上、左下、計4か所を調べる
  □ 必ず両眼を検査する
■ 眼球運動・眼振
  □ 指標(検者の右第2指など)を患者さんの眼前に示し、顔を動かさずに眼で指標を追ってくれるよう伝える
  □ 指標が患者さんの眼に近すぎないように注意する(眼前50cm程度)
  □ 指標はゆっくりと円滑に動かす
  □ 上下・左右4方向への動きを検査する
  □ 上下・左右4方向の最終地点で指標の動きを止め、眼振の有無を観察する
■ 眼底
  □ 眼底鏡を見せながら、眼の奥を見る検査を行うことを告げて、了承を得る
  □ 眼を動かさず前方を見ていてほしいことを告げる
  □ 患者さんの右眼は右眼で、左眼は左眼で検査する
  □ 頭に触ることを断った上で、検者の空いた手で患者さんの頭部を支える
  □ 眼底鏡が患者さんと離れすぎないようにする(5cm以内)
  □ *乳頭(萎縮、浮腫など)、網膜(出血など)、動静脈(径、交叉など)の異常の有無を観察する
  □ 必ず両側を検査する
■ 途中のまとめ
  □ これまでの所見を患者さんに説明する(臨床実習では指導医の指導のもとで行う)

■ 顔面の感覚
  □ 検査器具を見せながら、顔の痛みや触った感じを検査することを告げる
  □ 3枝の各領域を区別して検査する
  □ 各領域について左右差を確認する
■ *角膜反射
■ *咬筋と側頭筋の筋収縮
■ 顔面筋の筋力
  □ 両眼をギューと固く閉じてもらい、まつげ徴候の有無を観察する
  □ 眼を開けてもらった後、自分で見本を見せながら、歯を見せて「イー」と言ってもらう(口を固く閉じてもらってもよい)
  □ 口角の偏位、鼻唇溝の左右差などを観察する

(注)顔面神経麻痺が疑われた場合は、額のしわ寄せを検査する(上方への眼球運動をみる要領)
 
■ 軟口蓋の動き
  □ 口を大きく開けて、「アー」と少し長く声を出してもらう
  □ 軟口蓋の動き、偏位の有無、カーテン徴候の有無を観察する
  □ 観察しにくい場合には、舌圧子やペンライトを使用するなど工夫する
■ 舌の観察
  □ 舌を見たいことを告げ、口を大きく開けて楽にしてもらいながら、舌の萎縮と線維束攣縮の有無を観察する
  □ 検者が見本を示した上で、舌をまっすぐに出してもらい、舌の偏位の有無を観察する
■ 胸鎖乳突筋
  □ 首の筋肉の検査を行うことを告げ、手で方向を示しながら、側方を向いてもらう
  □ 顎に手をあてることを告げ、患者さんの顔を向けた側の顎に検者の手掌をあてがう
  □ 検者の手で顔を押すので、負けないように頑張って力を入れてほしいことを告げる
  □ 胸鎖乳突筋の筋力を判定する
  □ 反対側の手で収縮した胸鎖乳突筋を触診する
  □ 必ず両側を検査する
■ 脳神経系後半のまとめ
  □ これまでの所見を患者さんに説明する(臨床実習では指導医の指導のもとで行う)

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上肢の運動系の診察(座位)
■ 上肢の診察を行う旨を伝える
■ 上半身の視診
  □ 手を膝においてゆったりと座ってもらう
  □ 安静時の振戦、その他の不随意運動(頭部の振戦、舞踏様運動など)の有無を観察する
■ 姿勢振戦
  □ 両上肢を前方に伸ばして指を少し広げてもらい,手指の姿勢振戦の有無を観察する
■ Barre 徴候(上肢)
  □ 検者の手をそえて、良い肢位をガイドしながら、両手を前に伸ばして掌を上に向けてもらう
  □ 両眼を閉じてもらい、そのまま手をおろさずに頑張ってもらう
  □ 一側上肢の降下、回内の有無を判定する
■ 筋トーヌス(肘関節)
  □ 検者が患者さんの手を動かすが、患者さんは力を抜いて、自分では手を動かさないようにしてほしい旨を伝える(2-3回の練習で、力を抜くことを理解してもらう)
  □ 左手で患者さんの肘関節伸側を軽く持ち、右手で患者さんの手をもって、肘関節を被動的にゆっくりと動かす
  □ 筋トーヌスの異常(固縮、痙縮など)の有無を判定する
  □ 必ず両側を検査する
■ 鼻指鼻試験
  □ 検者の右第2指を出してみせ、患者さんにも同じように右第2指を出してもらう
  □ 左手で相手の右第2指のつけねあたりを持ち、自分の右第2指の指尖と相手の鼻のあたまとの間を行ったり来たりする動作を練習するように2-3回ガイドする(してほしいことが相手に理解されているかどうかを確認)
  □ 患者さんが手を伸ばすと指に届く程度の距離で検査を行う
  □ 検者の指は少しずつ位置を変える
  □ 運動の円滑さ、振戦や測定異常の有無などを観察する
  □ 必ず両側を検査する
■ 手回内・回外試験
  □ 検者が見本をみせながら、両手を上げて手の回内と回外を反復してもらう(片手ずつ行ってもよい)
  □ 反復拮抗運動不能(dysdiadochokinesis)の有無を判定する
■ 上肢の運動系検査のまとめ
  □ これまでの所見を患者さんに説明する(臨床実習では指導医の指導のもとで行う)

(注)病歴から四肢の筋力低下が疑われる場合には、ここでまず上肢の握力検査と徒手筋力検査を行う.さらに、上半身を露出してもらい、上肢・体幹の筋萎縮、線維束攣縮の有無を観察する.

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上肢の握力と徒手筋力検査
■ 上肢の握力と筋力検査を行う旨を伝え,利き手を確認する
■ 握力検査
  □ 握力計を渡し、握る場所を指示して、片手で強く握ってもらう
  □ 必ず両側を検査する
■ *三角筋
  □ 検者が見本をみせて、両上肢を外転位で90゜挙上してもらう
  □ 患者さんの腕を上から押すが、それに負けないよう頑張ってほしい旨を伝える
  □ 肘関節のやや上部を両手で押して筋力を判定する
■ *上腕二頭筋
  □ 検者が力こぶを作るように見本をみせて、片側の腕を曲げてもらう
  □ 患者さんの腕を伸ばそうとするが、それに負けないよう頑張ってほしい旨を伝える
  □ 被検者の肩口を左手で押さえ、右手で患者さんの手首を握り、肘関節を伸展させて抵抗する筋力を判定する
  □ 必ず両側を検査する
■ *上腕三頭筋
  □ 検者が上腕の屈側を上にして腕を伸ばすように見本を示し、片側の腕を伸ばしてもらう
  □ 患者さんの腕を曲げようとするが、それに負けないよう頑張ってほしい旨を伝える
  □ 患者さんの上腕を肘関節のやや上で、上から左手で押さえ、右手で下から患者さんの手首を持ち、肘関節を屈曲させて抵抗する筋力を判定する
  □ 必ず両側を検査する
■ *手関節の背屈
  □ 検者が指を握った状態で手首を背屈する見本を示し、片側の手首を背屈してもらう
  □ 患者さんの手首を曲げようとするが、それに負けないよう頑張ってほしい旨を伝える
  □ 左手で患者さんの前腕を手首の近くで握り、右手の掌側を患者さんの手背にあてがい、手関節を前屈させて抵抗する筋力を判定する
  □ 必ず両側を検査する
■ *手関節の掌屈
  □ 検者が指を握った状態で手首を掌屈する見本を示し、片側の手首を掌屈してもらう
  □ 患者さんの手首を曲げようとするが、それに負けないよう頑張ってほしい旨を伝える
  □ 左手で患者さんの前腕を手首の近くで握り、右手の掌側を患者さんの掌側にあてがい、手関節を背屈させて抵抗する筋力を判定する
  □ 必ず両側を検査する
■ 上肢の筋力検査、視診のまとめ
  □ これまでの所見を患者さんに説明する(臨床実習では指導医の指導のもとで行う)

起立・歩行の観察(座位から立位へ)
■ 歩行の検査を行う旨を伝える。
■ 通常歩行とつぎ足歩行
  □ 診察室内の空いた場所を示し、立ち上がって普段どおりに歩いてもらう(可能であれば廊下などを使用することが望ましい)
  □ 歩行の異常(Parkinson歩行、失調性歩行、動揺歩行、鶏歩など)の有無を観察する
(注)通常歩行で異常がみられなければ、つぎ足歩行を追加する.
  □ 検者が、足の先と踵が離れないようにしながら、まっすぐ歩く動作を見本として示し、そのように歩いてもらう(下手な場合には慣れるまで何度か試みる)
  □ 歩行の異常(ふらつき、よろめきなど)の有無を観察する
  □ 危険のないよう、患者さんの近くにいて見守る
■ Romberg 試験
  □ 検者が、つま先をそろえて立つ姿勢を見本として示し、そのように立ってもらう
  □ 体が動揺しないか、しばらく観察する(5-10秒)
  □ そばにいて支えるので、体がふらついても心配がないことを説明した上で、患者さんに眼を閉じてもらう
  □ 閉眼による体の大きな動揺がないかしばらく観察して、Romberg徴候の有無を判定する(5-10秒)
  □ 危険のないよう、患者さんのそばにいて見守る(いつでも抱えられる体勢)
■ 起立・歩行の検査のまとめ
  □ これまでの所見を患者さんに説明する(臨床実習では指導医の指導のもとで行う)

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臥位での検査(立位から臥位へ)
下肢の運動系の検査

■ 寝た位置での診察を行うことを説明する
■ 四肢、体幹が露出しにくいような衣服の場合には、診察に適した状態になるよう適宜工夫してもらう(バスタオルや病衣の使用が必要になる場合もある)
■ 靴下をぬいで、診察ベッドにうつ伏せになって寝てもらう
■ Barre 徴候(下肢)
  □ 検者の手をそえて、良い肢位をガイドしながら、両膝関節を90°曲げてもらう
  □ そのまま膝を曲げた状態で頑張ってもらう
  □ 一側下肢の下降の有無を判定する
■ 診察ベッドに仰向けになって寝てもらう(腹臥位から仰臥位へ)
■ 踵膝試験
  □ 検者の右踵を用いて検査方法の見本を見せ、このような動作を行ってほしいことを伝える
  □ 手で患者さんの下肢を持ち、足関節を少し背屈した状態で、踵を反対側の膝に正確にのせて、すねに沿って足首までまっすぐに踵をすべらせ、次は、足首からすねに沿って膝まで踵をすべらせて止める動作を1-2回ガイドする
  □ 患者さんが理解したところで、実際にこの動作を行ってもらい、運動の円滑さ、足のゆれや測定異常の有無などを観察する
  □ 必ず両側を検査する

■ *すね叩き試験
  □ 検者の右踵で左すねを反復して叩く動作を見せ、このような動作を行ってほしいことを伝える
  □ 手で患者さんの下肢を持ち、足関節を少し背屈した状態で、10-20cmの距離から踵で反対側のすねを反復して叩く動作を2-3回ガイドする
  □ 患者さんが理解したところで、実際にすね叩きの動作を行ってもらい、運動の円滑さや測定異常の有無などを観察する
  □ 必ず両側を検査する

■ 途中のまとめ
  □ 下肢の運動系に関する検査の所見を患者さんに説明する(臨床実習では指導医の指導のもとで行う)

(注)病歴から四肢の筋力低下が疑われる場合には、下肢の徒手筋力検査を追加する.さらに、下半身を露出してもらい、下肢・体幹の筋萎縮、線維束攣縮の有無を観察する.
 なお、下肢の徒手筋力検査を詳細に行うためには、腹臥位、座位、立位を適宜併用する必要があるが、ここでは学生が検査を円滑に行うために、仰臥位でのスクリーニング検査法を記載した.

*下肢の徒手筋力検査
■ *下肢の筋力検査を行う旨を伝える
■ *大腿四頭筋
  □ 検者が膝関節をピーンと伸ばすように見本を示し、片側の下肢を伸ばしてもらう
  □ 患者さんの足を曲げようとするが、それに負けないよう頑張ってほしい旨を伝える
  □ 患者さんの大腿部を左手で下から支え、右手で足関節の上方を上から握り、膝関節を屈曲させようとして抵抗する筋力を判定する
  □ 必ず両側を検査する
■ *腸腰筋
  □ 検者が股関節を曲げるように見本を示し、患者さんの大腿部が腹部につくような方向に股関節を屈曲してもらう(膝は曲げたまま)
  □ 患者さんの足を戻そうとするが、それに負けないよう頑張ってほしい旨を伝える
  □ 患者さんの大腿伸側に左手をあて、股関節を伸ばそうとして抵抗する筋力を判定する
  □ 必ず両側を検査する
■ *大腿屈筋群
  □ 両膝を軽く立ててもらい、患者さんの下腿下部(足関節の上)を屈側から右手で握る
  □ 患者さんの足を伸ばそうとするが、それに負けないよう頑張ってほしい旨を伝える
  □ 下肢を伸展させるように引っ張り、抵抗する筋力を判定する
  □ 必ず両側を検査する
(注)この検査は腹臥位になってもらい膝関節90°屈曲位で行うのが望ましいが、大腿四頭筋や腸腰筋とともに、下肢近位筋群のおおまかな筋力測定を行うことを重点とした.
■ *前脛骨筋
  □ 検者が手首を背屈して見本を示し、それをまねて両側の足首を背屈してもらう
  □ 患者さんの足首を伸ばそうとするが、それに負けないよう頑張ってほしい旨を伝える
  □ 患者さんの足背に両手をあてがい、足関節を押して抵抗する筋力を判定する(片側ずつでもよい)
  □ 必ず両側を検査する
■ *腓腹筋
  □ 検者が手首を伸ばして見本を示し、それをまねて両側の足首を伸展してもらう
  □ 患者さんの足首を曲げようとするが、それに負けないよう頑張ってほしい旨を伝える
  □ 患者さんの足の裏の上半部に両手をあてがい、足関節を背屈させようとして抵抗する筋力を判定する(片側ずつでもよい)
  □ 必ず両側を検査する
(注)この検査を精密に行うためには立位での検査が必要であるが、前脛骨筋とともに下肢遠位筋群のおおまかな筋力測定を行うことを重点とした.
■ *下肢の筋力検査、視診のまとめ
  □ これまでの所見を患者さんに説明する(臨床実習では指導医の指導のもとで行う)

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感覚系の検査
■ 感覚系の検査を行うことを告げる
■ 四肢の感覚検査
  □ ヨウジルやーレットなどを見せながら、四肢の痛みの感覚を検査することを告げる
  □ 左右の前腕伸側に痛み刺激を加え、痛みを感じるかどうか、左右差がないかどうかを確認する
  □ 左右の下腿伸側に痛み刺激を加え、痛みを感じるかどうか、左右差がないかどうかを確認する
  □ 柔らかな筆先などを用いて、触覚についても同様に検査する

(注)病歴から単ニューロパチーや髄節性の感覚障害、レベルを持った感覚障害などが疑われるような場合には、必要に応じて体幹部も含めた詳細な検査を行う.

■ 下肢の振動覚検査
  □ 音叉を見せて、これを振動させて検査することを伝える
  □ 音叉に強い振動を与え、患者さんの胸骨または手背で、振動の感じを体験してもらう
  □ 振動する感じが分かったことを確認した後、音叉を叩き、患者さんの外果などに押し当てる
  □ 音叉の振動は徐々に弱まって消失することを説明して、振動を感じなくなったら「はい」というなど合図してくれるように伝える
  □ 合図があった時点で、検者の手に感じる振動の大小で、振動覚障害の有無を判定する
  □ 必ず両側を検査する
■ *下肢の関節覚の検査
  □ 指の関節の感覚の検査(足の指が上か下かどちらに動いたかをあててもらう検査)を行う旨を説明する
  □ 患者さんに閉眼してもらう
  □ 検者の左手で患者さんの第1趾を第2趾と離れるように拡げ、右第1指と第2指で患者さんの第1趾の側面をつまみ、水平位から上または下に動かし、どちらに動いたか答えてもらう(第2趾で行ってもよい)
  □ 動かす時には、これから動かすことを患者さんに告げる
  □ 関節覚異常の有無を判定する
  □ 必ず両側を検査する
■ 感覚系検査のまとめ
  □ これまでの所見を患者さんに説明する(臨床実習では指導医の指導のもとで行う)

反射
■ ハンマーを見せながら、これで顎や手足を軽く叩く反射の検査を行うことを説明する
■ 手足の検査をするため、手は肘の上まで、足は膝の上まで露出できるように、シャツやズボンを用意してもらうよう説明する
■ 肩や手足の力を抜いて、楽にしてくれるよう告げる
■ ハンマーで前腕の柔らかい部分を軽く叩いて見せて、大体の感じをつかんでもらう
■ ハンマーを握りしめずに、バランスのよい部分を持つ
■ 適切な強さとスピードでハンマーを振る
■ 手首のスナップをきかせてスムースにハンマーを振る

■ 下顎反射
  □ 口を半分くらい開けて、楽にしてもらう
  □ 患者さんの下顎の真ん中に自分の左第2指の指先掌側を水平にあてがい、この場所を叩くことを告げる
  □ 指のDIP関節付近をハンマーで叩く
■ 上腕二頭筋反射
  □ 検者がガイドしつつ、両上肢を軽く外転し、肘を曲げて両手がお腹の上に乗るような肢位をとってもらう
  □ 肘関節の屈側で上腕二頭筋の腱を左第2指の掌側で押さえ、腱の真上を叩くように第2指のDIP関節付近をハンマーで叩く
  □ 必ず両側を検査する
■ 上腕三頭筋反射
  □ 検者がガイドしつつ、肘関節を約90゜屈曲し、前腕屈側がお腹の上に乗るような肢位をとってもらう
  □ 肘関節の約3cm上部の伸側をハンマーで叩く
  □ 必ず両側を検査する
■ 橈骨反射
  □ 検者がガイドしつつ、両上肢を軽く外転し、肘を曲げて手掌がお腹の上に乗るような肢位をとってもらう
  □ 手関節の2-3cm上部で橈骨下端をハンマーで叩く
  □ 必ず両側を検査する
■ 膝蓋腱反射
  □ 両膝を約120-150゜屈曲してもらう、片膝を立てて足を組んでもらうなど、適切な方法で膝関節を屈曲した肢位をとってもらう
  □ 膝蓋腱を左手で確認し、その部位をハンマーで叩く
  □ 必ず両側を検査する。
■ アキレス腱反射
  □ 下肢を軽く外転して膝関節を軽く曲げる肢位、下肢を膝関節で軽く曲げて対側下肢の下腿前面に乗せる肢位などをとってもらう
  □ 検査する下肢の足蹠を左手で持ち、足関節を屈曲した位置にして、アキレス腱をハンマーで叩く
  □ この際、足関節を被動的に2-3回屈伸し、力がぬけていることを確認する
  □ 必ず両側を検査する
■ Hoffmann 反射
  □ 検者の左第1指と第2または第3指で、患者さんの第3指のつけねを手背側から包むように持ち、手関節をやや背屈させる
  □ 検者の右第2指と第3指DIP関節付近で患者さんの第3指をはさみ、検者の第1指の掌側を患者さんの第3指の爪にあて、下方に向かって弾くように刺激する
  □ 第1指が屈曲するかどうかを観察する
  □ 必ず両側を検査する
■ Babinski 反射
  □ ヨウジなどの器具を見せ、足の裏をくすぐるようにこすることを説明する
  □ 患者さんの足背を左手で持ち、やや背屈させて、足蹠の外側を踵側から上にゆっくりとこすりあげ、第5趾のつけね付近で内側に向けて曲げる
  □ 第1趾の背屈がみられるかどうかを観察する
  □ 必ず両側を検査する
■ 反射のまとめ
  □ これまでの所見を患者さんに説明する(臨床実習では指導医の指導のもとで行う)
■ *腹壁反射
(注)錐体路障害が疑われる場合、必要に応じて腹壁反射を追加する.

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髄膜刺激徴候
■ 患者さん自身にあごを胸につけてもらい,髄膜刺激徴候の有無を検査する
(注)髄膜刺激徴候が疑われる場合には、下記を追加する.
■ 項部硬直
  □ 首の動きを検査することを告げ、枕をはずしてもらう
  □ 頭部に触ることを告げ、患者さんの後頭部を両手でかかえる
  □ 検者が患者さんの頭を動かすので、自分では首を曲げたり頭を動かしたりしないように説明する
  □ はじめに左右に回してみて力が入っていないことを確認した後、ゆっくりと頭部を前屈させ、項部硬直の有無を判定する
■ *Kernig 徴候
  □ 足を曲げたり伸ばしたりする検査を行うこと、もし痛みがある場合には、すぐに言ってもらいたい旨を説明する
  □ 検者の手でガイドしながら、患者さんの片側の股関節を90゜屈曲してもらい、さらに膝関節も90゜屈曲してもらう
  □ 患者さんの大腿伸側を膝関節のやや上で左手でつかみ、右手で患者さんの踵を下から押して膝関節をゆっくりと伸展させていき、Kernig徴候の有無を判定する
■ 髄膜刺激徴候のまとめ
  □ これまでの所見を患者さんに説明する(臨床実習では指導医の指導のもとで行う)

認知機能の検査
(注)病歴聴取の段階で認知機能の異常が疑われたら、他の診察の前に下記の検査を行う。

■ 認知機能の検査(記憶や計算などの簡単な質問)を行う旨を説明する
■ 見当識
  □ 時間、場所、人に対する見当識を問う
■ 記憶
  □ 生年月日、出生地、出身小学校などについて尋ねる(遠隔記憶)
  □ 朝の食事内容、昨日の天気などについて尋ねる(近時記憶)
  □ 数字の順唱と逆唱を適切な方法で行う(1秒に1つのスピードで)(即時記憶)
■ 計算
  □ 100から7を順に引いてもらう
■ 常識
  □ 総理大臣の名前、テレビで話題の事件などについて尋ねる
■ 認知機能検査のまとめ
  □ これまでの所見を患者さんに説明する(臨床実習では指導医の指導のもとで行う)

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VII.脈拍・血圧の測定

脈拍
■ 椅子に座ってもらい、リラックスするように声をかける
■ 両腕の橈骨動脈に検者の3本の指(第2・3・4指尖)をあてる
■ 左右差の有無を確認する
■ 不整の有無を確認する
■ 3本の指を使って緊張度を診る
■ 左右差がないのを確認してから片方の腕で脈拍数を数える(15秒数えて4倍する)
■ 所見を患者さんに説明する(臨床実習では指導医の指導のもとで行う)

血圧
■ これから血圧を測定する旨を告げリラックスしてもらう
■ 血圧計を使用できる状態にセットする
■ マンシェットの大きさが適切であることを確認する
■ 枕や支持台を利用して上腕の位置が心臓の高さとなるように調節する
■ 十分に上腕を露出する
■ 上腕動脈を触診して位置を同定する
■ マンシェットのゴム袋の中央が上腕動脈の真上にくるように巻く(ゴム管は上でも下でもよい)
■ マンシェットの下端と肘窩との間隔は約2cmあけて巻く
■ マンシェットは腕にぴったりと巻き、指が1-2本入ることを確認する
■ 最初に触診法を行う
■ 橈骨動脈を触診で同定する
■ 水銀柱を70mmHgまで速やかに上昇させその後10mmHgずつ上げてゆく
■ 橈骨動脈の脈が触れなくなる値を確認し報告する
■ 聴診器をイヤピースの方向に注意して耳にかける
■ 聴診器を肘窩の上腕動脈の上に置く(膜部、ベル部はどちらでもよい)
■ 触診法で脈を触れなくなったところから20-30mmHg上まで内圧を速やかに上げる
■ 1秒間に2mmHgずつゆっくり内圧を下げる
■ Korotkoff音が聞こえ始めたら、2mmHg/1心拍程度のスピードで内圧を下げる
■ Korotkoff音が聞こえなくなっても10mmHgはゆっくり内圧を下げ、再度聞こえることがないのを確認する(聴診間隙の確認)
■ それ以後は急速に内圧を下げる
■ 30秒おいてもう1回測定し、2回の平均値をとって患者さんの血圧とする
■ 同様に反対側の血圧を測定する(初診の患者では必ず両方測定する)
■ Korotkoff音が聞こえにくいときは手を開いたり閉じたりしてもらう
■ 血圧の測定結果を患者さんに説明する(臨床実習では指導医の指導のもとで行う)

下肢の脈拍・血圧
■ 後脛骨動脈および足背動脈を触診する
■ ゴム袋中央が動脈の真上にくるように上腕用のマンシェットを巻く
■ マンシェットの下端が内果の直上にあるように巻く
■ 以下、上腕の血圧測定と同じ手順で触診により血圧を測定する
■ 脈拍と血圧の測定結果を患者さんに説明する(臨床実習では指導医の指導のもとで行う)

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VIII.救命処置

課題設定:院内での救急患者さん遭遇
学習および評価はシミュレーターを用いて行う

1.一次救命処置 (Basic Life Support; BLS)を1人で行う
■ 救急患者さんの耳元で大きく声をかけながら、頸椎が大きく動揺しないように肩を軽く叩くか、揺すって意識を確認する
■ 反応がなければ助けを求め(病室内ではナースコールを使う)以下を依頼する
  □ 人を集めること(可能であれば救急コール)
  □ 救急カート、除細動器、背板等を持ってくること
■ 呼吸運動・肋骨弓・剣状突起が確認できるように胸部を露出する
■ 心臓マッサージができるように救急患者さんの側方に立つ(床の場合はひざまずく)
■ 気道確保と自発呼吸の有無の確認を行う
  □ 頭部後屈あご先挙上を行い、軟部組織を圧迫しないように気道を確保する(頸部損傷が疑われる場合は下顎挙上のみを行う)
  □ 救急患者さんの鼻と口すれすれに顔を近づけ、胸郭運動の有無を観察し、呼吸音を聴き、頬で呼気を感じながら(みて・きいて・感じて)10秒以内に自発呼吸の有無を確認する
■ 口対口人工呼吸を行う
  □ 自発呼吸がないと判断したら、フェイスシールドなどの感染予防器具を救急患者さんの口にあてる
  □ 前額部に当てている手の第1指と第2指で救急患者さんの鼻翼をつまんで鼻孔を塞ぎ、大きく空気を吸い込んだのち、救急患者さんの口を自分の口で漏れがないように十分に覆い、1回に2秒かけて、約10 ml/kg(胸郭が軽く上がる程度)の呼気を、ゆっくり2回吹き込み、1回ごとに救急患者さんの呼気を確認する
■ 循環のサイン(いき・せき・動き)と脈拍を確認する(10秒以内に)
  □ 呼気吹き込みの後に、正常な自発呼吸か咳込みの有無を確認する
  □ 頭部後屈あご先挙上を保ったまま、あご先を挙上していた指を頸部に移動し、甲状隆起の高さで手前にずらし、第2指と第3指を揃えて甲状軟骨、気管と胸鎖乳突筋の間に軽く押し当て、頸動脈の拍動の有無を確認する
  □ 脈拍の確認と同時に全身を見渡し体動(痙攣を除く)の有無を確認する
■ 心臓マッサージを開始する
  □ 循環のサインがないと判断したら、救急患者さんの足側にある自分の第2指と第3指を、患者の肋骨縁に沿って手前から正中部に移動させ、心臓マッサージの位置(胸骨正中下半分)を決める(この位置決めは、人工呼吸から切り替えの時に毎回行う)
  □ 胸骨に置いた手に他方の手を組み合わせて背屈させ、手掌基部のみで圧迫できるようにする
  □ 両肘関節の伸展を保ち、救急患者さんの真上から胸骨を垂直に3.5-5.0cmの深さに沈むまで、1分間に100回の速さで圧迫する
  □ 圧迫解除の際、手が前胸部から離れて位置がずれることのないように、また圧迫解除が不十分にならないように注意する
■ 心臓マッサージを15回、人工呼吸を2回の回数比で、迅速に切り替えながら繰り返す
■ 循環のサイン・自発呼吸の有無および意識状態の再確認
  □ 4サイクル目の心臓マッサージの終了後、呼気吹き込みの後に循環のサインを確認する
  □ 循環のサインがなければ心臓マッサージと人工呼吸を繰り返す(2-3分ごとに循環のサインを再確認する)
  □ 循環のサインがあれば、気道を確保して自発呼吸の確認を行う
  □ 自発呼吸がない、弱い、呼吸回数が1分間に5回以下のいずれかの場合には、1分間に12-15回の呼気吹き込みを続ける
  □ 自発呼吸が十分あれば、意識を確認し、意識の有無にかかわらず救急患者さんを回復体位にして意識・自発呼吸・循環のサインを観察、評価する

2.*二次救命処置 (Advanced Cardiovascular Life Support; ACLS)に蘇生チームの1人として参加する
■ *蘇生チームリーダーの指示のもとに以下の処置を行い,処置が済んだことを報告する
  □ 救急患者さんの状態を報告する
  □ 人工呼吸と心臓マッサージを途切れないように交代する
  □ 蘇生チームによって挙上された救急患者さんの背中とベッドの間に背板を挿入する
  □ 背板挿入の際に、頸部固定または救急患者さんの挙上を行う
  □ 心臓マッサージを行う
  □ バッグバルブマスクを用いた人工呼吸を胸郭の上下動確認と同時に行う
  □ 心電図モニターの電源投入・リード線装着・感度と誘導の切り換えを行う
  □ 心臓マッサージを中断させ、10秒以内に脈拍確認と心電図波形を判読する
  □ 電気的除細動を安全に行う(蘇生チームがだれも患者さんおよびベッドに触れていないこと)
  □ 除細動器のエネルギーレベルを設定する
  □ 末梢静脈路を肘正中皮静脈から18ゲージの血管留置針で確保する
  □ 気管挿管を行い、挿管後の確認を行う

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IX.手洗い・ガウンテクニック

● 臨床実習開始前に必須の項目であるが,各大学により実情が異なるので,ここでは学習項目について例示する
● 各大学は例示に準拠した学習・評価項目を作成する

準備
■ 爪を短く切ってあることを確認する
■ 手術着に着替える(白衣の場合は肘上まで袖をまくる)
■ 手術用帽子を頭髪が露出しないように着用する
■ 手術用マスクを口・鼻を完全に覆うように着用する

術前の手洗い(ブラシを使う場合)
■ 手指、前腕を流水で洗い流す
■ 手洗い用消毒液(7.5%ポピドンヨード、4%クロルヘキシジンなど)により指間、指先に注意を払いながら手指から肘まで手もみ洗いする
■ すすぎ液が中枢側へ流れるように手指から肘までを流水で洗い流す
■ ブラシを用い手洗い用消毒液による摩擦洗浄を左右交互に手指、前腕末梢1/2、前腕中枢側から肘部の3部に分けて行う
■ すすぎ液が中枢側へ流れるように手指から肘までを流水で洗い流す
■ ブラシを替えて同様の摩擦洗浄、流水による洗い流しをもう一度行う
■ 滅菌タオルで指先から中枢側へ肘部まで拭く
■ アルコール含有速乾性擦式消毒剤を手指に擦り込む(省略可)

滅菌ガウンの装着(綿布ガウンの場合)
■ 滅菌された綿布ガウンを無菌的に取り出す
■ 滅菌ガウンを周囲に触れないように手を伸ばして広げる
■ 滅菌ガウンが周囲に触れないように注意しながら介助者へ右肩紐の端を渡す
■ 介助者に右肩紐を持ってもらい、左手で左肩紐を持ってガウンを広げながら、介助者に触れないように注意して袖口へ向かって右手を挿入する
■ 介助者に左肩紐を持ってもらい、介助者に触れないように注意しながら袖口へ向かって左手を挿入する
■ 介助者が後で肩と腰の紐を結んでいる間に正面の紐の結び目をほどく
■ 左手が背部に触れないように注意して紐を左から右に回し、それを右手で受ける
■ 正面右よりで紐を結びガウンで全身を被う

手袋装着
■ 右手で左手袋の折り返し部分(裏面にあたる部分)を持って取り上げる
■ 左手に適切に手袋を装着する
■ 左手の4本の指を反対側手袋の折り返しの部分(表面に当たる部分)に入れて取り上げる
■ 右手に適切に手袋を装着する
■ 手袋でガウンの袖口をすべて被う
■ 指部の部分のねじれをとり手袋を手に十分にフィットさせる

*手術準備
■ 滅菌した摂子または鉗子により皮膚消毒薬(7.5%ポピドンヨードなど)の十分にしみ込んだ綿球を容器から取り出す
■ 手術野の中心より外側へ向かい同心円を描きながら手術野より広範に消毒薬を皮膚に塗り込む
■ 消毒薬の乾燥後もう一度同様の消毒を行う
■ 消毒薬の乾燥後滅菌シーツで手術野の周囲を被う

手術後
■ 手袋をはずした後は流水で手を洗う

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X.外科基本手技

● 臨床実習開始前に必須の項目であるが,各大学により実情が異なるので,ここでは学習項目について例示する
● 各大学は例示に準拠した学習・評価項目を作成する

学習および評価はシミュレーターを用いて行う

患者さんへの配慮
■ 処置について患者さんに説明し承諾を得る(臨床実習では指導医の指導のもとで行う)

手袋の装着
■ 爪を短く切ってあることを確認する
■ 両前腕を露出する
■ 以下の項目は状況により省略可とする
  1. 手術用帽子を頭髪が露出しないように着用する
  2. 手術用マスクを口・鼻を完全に覆うように着用する
  3. 手指、前腕を流水で洗い流す
  4. 滅菌タオルで指先から中枢側へ肘部まで拭く
  5. アルコール含有速乾性擦式消毒剤を手指に擦り込む
■ 右手で左手袋の折り返し部分(裏面にあたる部分)を持って取り上げる
■ 左手に適切に手袋を装着する
■ 左手の4本の指を反対側手袋の折り返しの部分(表面に当たる部分)に入れて取り上げる
■ 右手に適切に手袋を装着する
■ 指部の部分のねじれをとり手袋を手に十分にフィットさせる

消毒(臨床実習では指導医の指導のもとで行う)
■ 消毒をすることを告げる
■ 清潔な摂子で消毒薬のついた綿球を介助者から受け取る
■ 創周囲の皮膚を中心から外側に向かい同心円状に必要十分(範囲・回数)に消毒する
■ 穴開きシーツ(ドレープ)で創部を清潔に覆う

局所麻酔(実際は省略.臨床実習では指導医の指導のもとで行う)

縫合(臨床実習では指導医の指導のもとで行う)
■ 持針器を選択し、針の先端から3/4程度の部分を針先が向かって左に位置するように持針器の先端近くで把持する(右利きの場合)
■ 針に糸を折り返しを3-4cmにして装着する
■ 摂子を選択し、左手の拇指と示指、中指で、その基軸を手背に向かわせるように把持する
■ 持針器を器種にあわせて適切に把持する
■ 患者さんに声をかけながら手技をすすめる
■ 創縁から針の半径よりやや短い長さに針を皮膚及び創縁に対して直角に挿入する
■ 針の湾曲にそって、死腔を残さないように針先を進める
■ 創縁を軽く持ち上げるなど摂子を補助的に使用する
■ 刺入部と対称になるように反対側に針先を出す
■ 反対側に出た針を針先を損傷しないように持針器で把持する
■ 針の湾曲にそって、針を皮膚から抜く

結紮(臨床実習では指導医の指導のもとで行う)
■ 結紮を適切に行う(外科結紮など)
■ 剪刀のリングに第1指と第4指を挿入し,第2指を軽く曲げてその柄にそえて把持する
■ 余分な糸を結び目から5mm程度残して切る

ドレッシング(臨床実習では指導医の指導のもとで行う)
■ 創部を消毒する
■ 清潔操作によりガーゼなどを貼付する
■ 縫合が終了したことを患者さんに告げる

抜糸(臨床実習では指導医の指導のもとで行う)
■ 抜糸することを患者さんに告げ、了承を得る
■ 創に張力が加わらないようにガーゼなどを除去する
■ 創部を消毒する
■ 摂子と剪刀を正しく把持する
■ 摂子で糸の断端を把持し皮下に埋没していた糸を露出させる
■ 糸を露出部で切る
■ 創部を消毒しガーゼなどを貼付する
■ 患者さんに処置が終了したことを告げる

手技終了後
■手袋をはずした後は流水で手を洗う

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